【セミナー#4】NuZee Inc. 東田真輝 氏の起業ストーリー 〜売上0からナスダック上場まで〜

2021

千葉大学ベンチャービジネスマネジメントの講座(VBM)では、著名な経営者・起業家・ビジネスパーソンに登壇いただき、起業やキャリア戦略等についてお話いただいています。

2021年10月27日(#4)は、米テキサス州に本社を置く「NuZee Inc.(ニュージー)」社長兼最高経営責任者の東田真輝氏をスピーカーに迎え、セミナーを開催しました。同社は2020年にナスダック上場を果たしています。東田氏はカリフォルニアのサンディエゴから、オンライン配信を通して登壇頂きました。当日のセミナーの様子をお届けします。

■東田真輝氏のこれまでの歩み

東田氏のキャリアは金融業からスタートしています。
日本で金融業に携わった後は韓国に移り、同じく金融業で会社を設立され、その後売却。38歳でリタイアした後は、家族でニュージーランドに移住しています。

移住した翌年の2011年、東日本大震災が発生した際、当時日本にいる友人・知人から「水を送って欲しい」と頼まれ、春・夏はボランティアで日本に水を送ったりしていたそうです。皆から「美味しい」と言われたため、水を販売するようになり、さらに販売商品の種類も増やして行き、最終的にはドリップパックコーヒーを製造・販売するようになりました。

NuZee Inc.の前身となるiSpring Limitedをニュージーランドで創業し、拠点をアメリカに移してからNuZee Inc.を設立。会社名は創業した地のニュージーランドから「NuZee Inc.」と名付けられました。

■丸一年半、全く売れなかった

これまでの歩みをお話し頂いた後は、セミナー参加者とのディスカッションタイムをたっぷり用意しました。起業当初に関する質問が続きます。
(以下、敬称略)

ー参加者:一番最初のお客さんはどうやって獲得しましたか?

ー東田:獲得出来ませんでした、何年も(笑)
ボランティアで日本に水を送っていた時はとても喜ばれたけれど、いざ「買ってくれ」というと、これがからっきし買ってくれない。日本の食品商社で当たることが出来る所には全部当たりました。知らないブランドということもあり、誰も買ってくれませんでしたね。水は丸1年半、全く売れませんでした。

ー参加者:資本金が72億円とスライドに記載があり、凄く大きな金額だと感じました。そのお金はどのようにして集められたのでしょうか?

ー東田:最終的には大きな金額になっていますが、最初は小さく、と言っても個人で1億円を用意してスタートしています。2010年に会社を売却した際、ある程度の資金は獲得出来ていた状態ですね。その後は第三者から都度、資金調達していました。
途中で、ある会社を買収していて、その会社が過去に大きな資本金を計上していたことと、ナスダック上場後の資金調達が影響して大きな額になっています。

■ずっとやり続ける覚悟

続いて、売上に直結する「会社の信用」をどのように獲得していったのか、東田氏に伺いました。

ー参加者:大企業に比べるとベンチャー企業は無名であるが故に、信用を得ることが大変だと思います。信用を得るために意識したことや、拘ったことはありますか?

ー東田:ずっとやること、なんですよね。僕達も信用は全くありませんでした。信用が無かった理由は2つあって、一つは、業界のことを全く知らない人間が参入しているということ、もう一つが小さな会社ということ。

では信用をつけるにはどうするか? 簡単に言うと資本金が多かったり、売上が多かったり。でも最初は売上をこれから作る段階ですし、「卵が先か鶏が先か」と言うことを突きつけられてしまうんですよね。だから、やるからにはやらなきゃいけない。ずっとやり続ける覚悟でやってきました。

もう一つは、製造業をやるベンチャーって本当に小さいんですよね。小さいイコールみんなずっともがいているんです。食品衛生管理の許認可(SQF)をアメリカで取らなければいけないと言うことも知らなくて、許認可を取得するまでに2年かかりました。その間に展示会に出て、翌年も出て顔を覚えてもらって……そうやって信用を積み重ねていきましたね。

その後の質問に対しても、「やりかけたんだから、やり遂げないと格好悪い」「自分に課せられたものだと思って、やってきた」と語り、東田氏の事業に対する姿勢を垣間見ることが出来ました。その他にも、セミナーでは多くの質問に回答頂きました。

■登壇者プロフィール

NuZee Inc. 社長兼最高経営責任者
東田真輝 氏

日本・韓国で金融業に携わった後、米国でNuZeeを創業。元々はNuZee Inc.の前身となるiSpring Limitedをニュージーランドで創業したものの、コーヒー消費大国のアメリカで、一杯ずつ入れる「ドリップバッグ」が販売されていない事に着目し、2015年から米国内でドリップバッグコーヒーの製造と販売を開始。
2020年6月にナスダック上場、現在は全米のコーヒーロースターやホテルを相手にドリップバッグとティーバッグ型の委託製造会社として展開している。

■終わりに

今回は、NuZee Inc. 社長兼最高経営責任者の東田真輝氏に登壇頂いた際のセミナーの様子をお届けしました。

今後もアントレプレー教育の一環として、ベンチャービジネスマネジメントの講座(VBM)に登壇いただく予定です。著名な経営者・起業家・ビジネスパーソンから起業やキャリア戦略等についてお話いただきます。