【セミナー 2023-1025】株式会社e-lamp. 代表取締役 山本愛優美 氏の創業ストーリー

2023

千葉大学スタートアップトレーニングⅡの講座(SUTⅡ)では、著名な経営者・起業家・ビジネスパーソンにご登壇いただき、起業やキャリア戦略等についてお話いただいています。

2023年10月25日は、心拍に合わせて光るイヤリングを開発する株式会社e-lamp.の代表取締役 山本愛優美さんをスピーカーに迎え、セミナーを開催しました。「”ときめき”を生み出し、促進したい」という結論に至るまで、どんな人生を歩んできたのでしょうか。学生時代の活動から創業に至るまでお話いただきました。

当日のセミナーの様子をお届けします。

「中2で起業に憧れた。」

 スイスで日本料理屋を経営する親戚の方から仕事の話を聞き、「世界は広く、自由な冒険である」ということを知った山本さん。中学はバスケ部、高校は書道部、英語ディベート部と、普通の学生生活の一方で、4つの学生団体を立ち上げるなど、起業家精神が既にあり、10代で起業することを決めていました。
大きなきっかけとなったのは、自身の地元が舞台となった『銀の匙 Silver Spoon』。登場人物に強い衝撃を受け、「若くても起業して良いんだ」と感じたそうです。陽気で天真爛漫だった山本さんは、周りを巻き込みながら、教育の機会格差をテーマに動き出します。
しかし、応援はされるが、信頼はしてくれないという悩みにぶつかり、今すぐの起業を断念することに。まだ実績も経験も無かったからこその熱量と行動ですが、冷静に立ち止まることを選択します。その後の山本さんの活動は著しく、地方創生×教育の学生団体「TK部」や多数のイベントの開催が、地元の新聞、テレビに取り上げられるようになります。
全く変わった社会の目。「ここで起業したら反応が変わるのでは?」そう思った山本さんは、遂に念願の高校生起業家になります。マーケティングサポートやコンサルティング事業を行う「Nexstar|ネクストスター」を立ち上げる他、イベント「超学校祭」にて12校60人のスタッフと共に1万3000人を集めるなど、中学の時以上に周りを巻き込み行動していきました。この時のことを山本さんは、「半ば強制的に友人を仲間にした」と言っており、自ら動いたことで生み出した結果であることがよく分かります。

大学進学、「ときめき」研究開始

 山本さんが所属していた高校では多くの人が北海道大学を受験し進学しようとしますが、受験勉強に割く時間が無かったという山本さんは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(通称SFC)1校のみに合格します。上京後、年齢と肩書きに捉われない事業のことを「明日ニートになってもやりたい仕事」とし、改めて自己分析をしたところ、これまでの行動全ての原理が「ときめき」だったことに気づきました。自分が動きだした時、とにかくときめいていたという山本さんは、ドキドキとも、ハピネスとも完全一致しない、学術的に新しい概念について、数理心理学、感性工学的なアプローチで研究を開始しました。
並行して最初に手を付けた事業は、ときめきながら学びが記憶に残る恋愛×学習アプリ「Smart Kiss」。β版まで開発を進めたものの、正式リリースは断念。というのも、ベンチャーキャピタルでのインターンなどで出会う様々な人との話の中で、自身がまだ何者にもなれていないこと、ときめき分野の第一人者でないことを感じたからだそうです。

「ときめき」をテーマに生きる

そこからは研究と開発の日々が続きます。コロナ禍も、自宅でzoomを繋ぎながら教授と研究し続けることを怠らなかったと言います。山本さんは研究の中で、「刺激→有機体→反応」という、人間の内側で起きている心や感情の動きを観測出来ると予想します。「心拍、表情、脳血流に着目した場合のときめきは?」「心ときめき、時めき、Spark Joy=火花のような一瞬のときめきは?」ときめきにまつわる問いを繰り返し、科学的にも人文学的にも研究を重ねました。
「私たちはどうしたら幸せに生きられる?」「感情を自在に共有出来る未来になったらどんなことが起こるだろう。」そんな疑問を掲げながら、社会実装も視野に入れて動きます。表情で色の変わる間接照明のプロトタイプを作成するなど、着実に歩んでいきました。
そうした積み重ねが報われ、メディアや学会に出る機会も増え、協賛してくれる企業も現れ始めました。山本さんに共感し、応援してくれる人々が増えてきたそうです。そして遂に、新たなコミュニケーションのカタチを提案することになります。

もしも「心」が可視化されたら、社会はどう変わる?

これは、山本さんが立ち上げた「株式会社e-lamp.」 がとても大切にしている問いです。
この問いの追求の中で実現したのが、「e-lamp.」。心を、光で、可視化するイヤリング型デバイスです。
e-lamp.はただのオシャレとして価値を提供するのではなく、心拍を共有する空間の作成です。心の内側が可視化された社会で、コミュニケーションのカタチはどう変わっていくのでしょうか。山本さんの期待は、自分自身が内面を開示しているというオープンな意識を持つようになること、相手の気持ちを探ろうとするきっかけになることの2つでした。
まだまだ研究、開発段階であり、可能性が無限に広がっている段階だと言います。しかし、婚活イベントにおいてマッチング率が約3倍になったこと、応援したいアイドルの心拍を閲覧できる仕組みをつくったことなど、着実に社会に溶け込み、コミュニケーションのカタチを変えようとしています。

山本さん、e-lamp.のこれから

山本さんとe-lamp.の目標としては、2030年までに上場かM&Aを目指しており、心拍だけでなく、あらゆる生体情報の可視化へと事業を進めようとしています。
その一方で、「自分たちのしている事業は感情共有が完璧に出来るようになれば必要のないものになるので、その新しい世界でまた活躍するものをつくりたい。当たり前になると人はお金を払わなくなるので。そこまで溶け込めるインフラになったら幸せなことでもありますけどね。」と述べ、自分たちの目指す社会像についても熱弁していただきました。

最後には、「若い内にしか出来ないことで、一生は出来ないのは理解している。でも、世界で一番新しいことをしているし、何かがあってお金が0になっても拾ってくれるんじゃないですかね!」と持ち前の明るさを学生に伝え、セミナーを締めくくりました。

登壇者プロフィール

山本愛優美(やまもとあゆみ)
e-lamp. Co., Ltd / Nexstar, inc. CEO 

2001年、北海道帯広市生まれ。中学3年から4つの学生団体の立ち上げ、代表を経て、高校2年次に開業。エンターテイメント/教育領域で複数の事業プロデュースを行う。慶應義塾大学環境情報学部卒業。(在学中の2020年にe-lamp.着想)2023年春より同大学院メディアデザイン研究科へ進学。HCI領域のSocial Biofeedback研究に従事。2022年度未踏アドバンスト採択。現在はSTEAM人材として多数メディア出演。

終わりに

今回は、株式会社e-lamp.代表取締役の山本愛優美さんにご登壇いただいた際のセミナーの様子をお届けいたしました。

今後もアントレプレナー教育の一環として、スタートアップ・トレーニングⅡ(SUTⅡ)に登壇いただく予定です。著名な経営者・起業家・ビジネスパーソンから起業やキャリア戦略等についてお話しいただきます。