千葉大学スタートアップトレーニングⅡの講座（SUTⅡ）では、著名な経営者・起業家・ビジネスパーソンにご登壇いただき、起業やキャリア戦略等についてお話いただいています。
2023年12月20日は、武田薬品の研究所からスピンオフした株式会社アクセリードの代表取締役 池浦義典氏をスピーカーに迎え、セミナーを開催しました。創薬研究支援を行う研究者の視点からどのように会社を経営しているのか、お話いただきました。
当日のセミナーの様子をお届けします。
リーダー経験を重ねた研究員時代
武田薬品工業株式会社で約30年間医薬研究に従事しながら、在籍中にマサチューセッツ工科大学の博士研究員も経験した池浦氏。経済産業省、特許庁において各種委員等を歴任するなど、医薬品業界活動にも参画してきました。あらゆる組織でのリーダー経験から、ベンチャーを作る枠組みを学んだと言います。
2017年にAxcelead Drug Discovery Partnersを立ち上げ、創薬プラットフォームの構築に尽力。2023年4月にアクセリード株式会社代表取締役社長に就任しました。研究も経営も両立している池浦氏ですが、「全てのことを自分でやる必要はなく、自分の持っていない技術を持っている人と組めば良いだけ」と述べます。
製薬業界におけるアクセリード
株式会社アクセリードは、武田薬品の研究所からスピンオフした創薬研究支援の株式会社で、創薬ソリューションプロバイダーであるAxcelead Drug Discovery Partners 株式会社を
中核企業とした、世界レベルの創薬を実現する企業です。対象は会社からアカデミアまで、広い範囲で事業を成功させています。
事業内容としては、医薬品や医療機器に関する事業を営む会社の株式、持分を所有し、当該会社の事業活動を支援、グループ全体の企業価値向上に貢献することです。
しかし、製薬業界において日本は研究開発に力を入れていないと言います。ピーク時の日本の薬開発に比べ、現在はとても落ち込んでいます。池浦氏が考える日本で研究開発が進んでいない理由は2点。研究費用が少ないことと、市場規模が小さいことだそうです。1つの承認薬にかかる研究開発費用の概算は4000億円以上、長期間で膨大なお金がかかり、会社のみで進行する事柄では決してないといいます。
池浦氏は製薬業界における製薬ベンチャーの重要性を語ります。創薬開発品の状況については、大手企業よりも一般的にベンチャー企業と言われる企業の方が開発数が多いといいます。世界的にベンチャーが創薬開発の担い手になっている今、アクセリードが日本の製薬開発を担っていきたいと考えているそうです。
日本のベンチャー発展に向けて
日本で起業が少ないと思われる要因は、日本人の性質なのではないかと池浦氏は考えます。失敗を恐れ、安定を求める性質を持つ人は、大企業に入ろうとする傾向があります。しかし、池浦氏は一般のサラリーマンであっても経営に必要な知識を有していないことに問題意識を感じているそうです。「諸外国において、ステージに応じてバトンタッチをし、CEOやCSOなどの経営人材が排出される仕組みには見習う部分がある」と話します。
また、池浦氏はそれに派生して「ベンチャー企業のイグジットの形が海外と違う」と述べます。アメリカはM&Aが非常に多く、短期で資金が集められるのに対し、日本はIPOが多く、長い時間がかかる傾向にあります。
2024年6月には、日本のバイオ産業の発展のため、大規模ファンドを大学に創設する他、ベンチャーエコシステム強化事業を創出するための動きがあります。そんな中、池浦氏が思う成長する企業になるために意識していることは３つあると言います。「社会的インパクトを明確に測ること」「競走優位性を意識すること」「なぜ成功できるのかの根拠を理解すること」だそうです。
「All Japanはもちろん、 Global Japanとして、誰のために仕事をしているのかを常に考え行動していきたい。」と述べる池浦氏、アクセリードの今後の発展に期待する講座となりました。
登壇者プロフィール
池浦義典（いけうらよしのり）
アクセリード株式会社 代表取締役社長
京都大学修士課程修了、薬学博士。大学では生化学並びに有機化学を学び、武田薬品工業株式会社に入社。約30年もの間医薬研究に従事し、在籍中にはマサチューセッツ工科大学の博士研究員も経験。医薬研究本部長、湘南サイドヘッド等を歴任後、2017年7月より現職。
終わりに
今回は、株式会社アクセリード代表取締役社長の池浦義典氏にご登壇いただいた際のセミナーの様子をお届けいたしました。
今後もアントレプレナー教育の一環として、スタートアップ・トレーニングⅡ（SUTⅡ）に登壇いただく予定です。著名な経営者・起業家・ビジネスパーソンから起業やキャリア戦略等についてお話しいただきます。
