【セミナー #8】株式会社SARAH 高橋 洋太 氏の起業ストーリー 〜学生からの脱却 起業家(企業家)になるために〜

2021

千葉大学ベンチャービジネスマネジメントの講座(VBM)では、著名な経営者・起業家・ビジネスパーソンに登壇いただき、起業やキャリア戦略等についてお話しいただいています。

2021年12月1日(#8)は、メニュー単位で口コミを投稿できるグルメコミュニティアプリ「SARAH」を展開する株式会社SARAH 代表取締役 高橋 洋太 氏をお招きし、今回は「学生からの脱却〜起業家(企業家)になるために〜」をテーマにお話し頂きました。

当日のセミナーの様子をお届けします。

■高橋洋太 氏の「事業の着想」

冒頭は自己紹介から始まりました。

学生起業に始まり、株式会社エニグモで事業開発担当、そしてエニグモにて上場を経験します。その翌年に株式会社gram30 を創業し、さらに次の年には株式会社SARAHを創業しました。

現在、同社では3つの事業を展開しており、1つがグルメコミュニティアプリ「SARAH」、2つ目が外食ビッグデータ分析サービス「FoodDataBank」、3つ目が電子メニューサービス「SmartMenu」になります。

「SARAH」はお店単位で口コミを掲載するのではなく、メニュー単位で口コミが掲載できるサービスです。「SARAH」で蓄積されたデータを元に、大手食品メーカー等の商品改良に活かしているのが「FoodDataBank」。そして「SARAH」経由でさらに精度高くレコメンドし、飲食店のリピーター獲得に繋げているのが「SmartMenu」です。

次に、事業着想はどのように生まれたのか説明いただきました。

グルメアプリ「SARAH」の場合、高橋氏の「美味しいポテトサラダが食べたいと思って調べたが、googleでは見つけられなかった」という体験からスタートします。

当時、「メニュー検索ニーズが高まっている」「検索ドリブンからレコメンドドリブンになる」この二つの気づきから、現在の事業が生まれたそうです。

また、当初はSARAHのマネタイズをあまり考えずにスタートしたものの、食品メーカーから「データを売って欲しい」と問い合わせがきたことから、偶発的に生まれたのが「FoodDataBank」だそうです。「データを売って欲しい」と言われた理由として、食品メーカー側は感覚ドリブンで商品開発をしていることに課題を感じており、また商品アンケートも特典目的で回答する人が多く、アンケート自体の信憑性に課題を感じていることが判明しました。

■在り来たりなビジネスモデルしか作れない理由

大手企業でも在り来たりなビジネスモデルしか生まれない、という現状について「帰納法の罠」を例に説明いただきました。帰納法とは、複数の事例や事実から共通点をまとめ、共通点からわかる根拠をもとに結論を導き出す方法です。

コンビニエンスストアを例にすると「世間でプレミアムコーヒーが既に人気」である事実と「自社でプレミアムなパンが売れた」という実績から、「プレミアムコーヒーが売れる」と発想することだそうです。過去の事象を元に生まれる発想は、誰か(上司など)を説得することが目的になっている、と解説しました。

在り来たりなビジネスモデルしか作れない現状の打開策として、「帰納法ではなく演繹(えんえき)的に考えることが大事」と高橋氏は語ります。さらに「ルールが無いものやルールが作られる前のものはNG、という発想でいる限り、日本では新しいものは生まれない。偶発的に生まれることもあるし、必ずしも最初からマネタイズを考える必要は無い」と話しました。

■小さな課題解決から、大きな構想へ

これまでの歩みやビジネスモデルについてお話し頂いた後は、セミナー参加者とのディスカッションタイムを用意しました。

参加者からは下記の質問が寄せられました。(以下、敬称略)

ー参加者:今日の講演、とても面白かったです。SARAHを使ってみたいと思ったのですが、ユーザーの投稿するモチベーションはどこにあるのでしょうか。ユーザーの体験設計について伺いたいです。

ー高橋:食べたものを管理したり、食べたものを伝えたいという自己表現的な所がモチベーションになっていますね。例えば、ソフトクリームの写真をSARAHに1000枚投稿しました、という画像を自動生成して、SNSにシェアしてね、ということをやっています。これもユーザーの課題解決になっていて、「SNSで沢山食べたものを投稿したいけど嫌味だと思われたくない」「まとめて投稿したい」というニーズに刺さっているんです。

また、毎月ユーザーアワードという表彰もしています。その他にも、食べたものを投稿した時にどのジャンルかを判別できるので、自分で食べたものを管理出来ます。

PMF(Product Market Fit)という観点で言うと、最初からこのモデルは出来ないんですよね。僕自身、最初の2年間くらいは全国飲みに歩いてました。ご飯好きな人のコミュニティってどこにでもあって、そこに必ずリーダー的な人がいるんですよね。その人に「SARAH使って下さい」と九州から北海道まで渡り歩いて、徐々にPMFしました。

ー参加者:今日お話しされた帰納法ではなく演繹的な考え方というのは、BtoCだけではなくBtoBにも応用できるのでしょうか?

ー高橋:勿論、応用できると思います。自分が体験したものも、他人の体験を深ぼって聞くのも、ちゃんとビジネスを作れる人は自分の身の回りだけではなく、作れると思いますよ。起業家とか自分で事業を作る人の一番の能力って、「課題の発見能力」だと思っているので。

最後に、高橋氏から参加者に向けて「小さい所から始めよう」というメッセージを頂きました。

「起業家は最初から自信のある人はいないです。メディアに出る時は自信があるように見せているんですよね。自分も『美味しいポテトサラダを見つけたい』から始まって、今では『日本で誰が何を食べているか全部データを取りましょう』と大きな構想になっています。『徐々に視野を広げていく』で良いと思うので、自信を持って取り組んでもらえたら良いなと思います」と締めくくりました。

■登壇者プロフィール

株式会社SARAH

代表取締役 高橋 洋太 氏

大学在学中に起業、2009年より(株)エニグモにてBUYMA事業を担当し上場を経験。 2014年(株)SARAHを設立、代表取締役就任。 法政大学「アントレプレナーシップ論」講師も務める。

■終わりに

今回は、株式会社SARAH 代表取締役 高橋 洋太  氏に登壇頂いた際のセミナーの様子をお届けしました。

今後もアントレプレー教育の一環として、ベンチャービジネスマネジメントの講座(VBM)に登壇いただく予定です。著名な経営者・起業家・ビジネスパーソンから、起業やキャリア戦略等についてお話いただきます。